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18話



彼の名前が決まった。

凛々しい顔立ち、鋭い眼差し、美しい毛並み、

艶かしい体躯と立派な髭を持つ彼は、

先日我が家に新しい家族として迎えられた黒猫だ。

ちなみに、「彼」と言い切っているのは誤字脱字の類ではない。

流石に飼うにあたって性別も分からないのはかわいそうなので、

パソコンという文明の利機によりグーグル大先生にお伺いを立てたのだ。

まぁどうやら猫も人間と同じように、ついてるものがついてたり、

ついてないものがついてなかったりで見分けるらしい。

で、彼は僕と同じ♂な感じの性別だったわけだ。

種類の方が分からないのは相変わらずなんだけどな。

そういえば昔、黒猫のマンガがあったなぁ。

絵がかっこよくて好きだったな。

あの作者またああいうの書かないかな・・・。

おっと、話が逸れたな。

今日はそんな彼の名前が決まったエピソード。


時は平成、世は不況。油不足に米不足。

じゃなかった、時は昼過ぎだ。

予想通り朝は隣の部屋からモーニングコールで起こされ、

今はいつものように学校へ行ったあとのリラクゼーションタイムだ。

最近彼女が彼に取られているから僕にかまってくれないのを

寂しいと思っているなんてことはこれっぽっちも、

さらさら、まるで、すっきり、全くもってないわけだが、

やはり彼女がそばにいないとどこかもの足りない感じが

無いといえば嘘になってしまうということがあるかもしれない。

猫缶の中身を嬉しそうに新しく買ってきた猫皿に移す彼女を見て、

何処となくせつなさよりも遠くへ向かう1/3の純情な感情を

抱かずにはいられない。というか猫と少女、良い絵だ。

そんな一人と一匹を横目に僕は今日もゲームゲームゲーム。

しばらくすると餌をあげ終わった彼女と、食べ終わった彼がやってきた。

ソファーにちょこんと座る彼女と、その膝の上にくるんと丸まる彼。

彼女は脚の上の小動物を愛でるように毛繕う。

満たされた腹を撫でられて、気持ちよさそうに彼は瞼を落としていく。

彼女は完全に寝静まった頃合いを見計らって、

本来の居場所であるピクニック用のバスケットへと彼をそっと運ぶ。

起こしてはかわいそうだったので僕もゲームをやめて、

彼女と一緒にこの小さな新しい家族を眺めることにした。

にしても猫という生き物は寝ている姿が様になってるというか、

それこそが本来の姿のような、まさに寝子って感じだ。

こいつを見てるとこっちまで眠くなって・・・

たまにはのんびり昼寝もいいか・・・


―――。

ガシャンッ!

突然の破壊音で目が覚める。

「ポッキーーーー!!」

いつになく彼女が怒っている。

その矛先はどうやら黒い毛並みの彼らしい。

「こらぁ〜〜〜っ!!」

追い回す彼女から逃げてきた彼は、まっすぐ僕の方へと走ってきた。

「そいつ、泥棒ですっ!捕まえてくださいっ!!」

どこで覚えたのやら、昼ドラのような言い回しをする彼女。

とりあえず逃げてくる小さな泥棒猫をそっと抱え上げて彼女に問う。

「なんかあったのか?」

「この子っ!私のっ!ポッキー!食べたんっ!ですよっ!!?」

とりあえず憤慨していることだけは伝わった。

台所に散乱している赤い箱と食べかす、

彼のご自慢の鼻についたチョコレート。

さすがに言い逃れは難しそうだ。

「あ〜、わかったわかった。ポッキーは今度俺が買ってやるから、

 今日のところは許してやりな。いいだろ?」

「ダメですっ!ポッキーは私の唯一の楽しみだったのにっ!!」

「だから俺がこいつの食べた分買ってやるから、もう怒るなって。」

「ダ〜メ〜で〜すっ!!ポッキーの仇は許しておけませんっ!!!」

「わかった、じゃあ二箱買ってやるから、それで許せ。」

「本当ですかっ!!?」

「男に二言はないぜ。」

「ありがとうございますっ!><☆☆☆」

二箱で仇敵を星三つのおまけつきで買収される彼女だった。


そんなことがあった夜に、彼女に尋ねたわけだ。

「こいつの名前、決まったのか?」

「ふんっ!名前なんて知らないですっ!」

なんだかんだでやっぱり根に持っていた。

お菓子の恨みはそう簡単には消えないらしい。

そうとは知らない彼は一番の遊び相手である飼い主の元に歩み寄ってくる。

彼女は膝の上に跳び乗った彼と睨めっこして恨めしそうに呟いた。

「ポッキー・・・」





20XX/1/19 これはお菓子ですか?いいえ、猫です。


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