
このサイトは明後日に向かって全力疾走する、迷走を目的としたサイトです。
9話
「おはよう。」
「ぐっども〜にんぐすた〜☆」
今日も元気な声が帰ってくる。
いつもどおり彼女はご機嫌なようだ。
「朝ご飯、できてますよ〜☆」
どうやら今朝は彼女も朝食を作ったらしい。
先日料理を初体験(?)してから、ちょくちょく手伝うようになっているみたいだ。
食卓を見ると、白米に焼き鮭、味噌汁に漬物。
絵に描いたような日本人の朝食だ。
「今日もおいしそうだ。食べてもいいか?」
「はい、冷めないうちにどうぞ☆」
先日のカレーにも負けず劣らず、シンプルながらもおいしい食事だった。
僕は口からこぼれたかのように感想を呟く。
「おいしい。」
それを聞くと彼女は少し頬を赤らめて嬉しそうな顔をする。
一々リアクションのかわいい子だ。
おいしいの一言でこれだけ嬉しそうな、幸せそうな顔が見れるなんて、
まさに一口で二度おいしいといった感じだ。
僕は二度分のおいしさを一口一口味わいながら完食し
、
食器を下げて席を立った。
今日は朝から雨が降り続いていた。
太陽の光は一日中差し込むことのないまま、時は夕方、午後五時前。
なんの前触れもなく親父がいつもより早く帰ってきていた。
彼女は・・・部屋の中。大丈夫、見つからないはずだ。
普段から深夜帰りは当たり前の仕事人間の親父。
その人がどうして今日は帰りが早いのかと訪ねると、
明日から海外出張に出るのだと答えた。
僕は猫語はおろか英語すらできないが、親父は数ヶ国語喋れるらしい。
英語と中国語は覚えているが、あとはどこの国の言葉があったか・・・。
とにかく、親父は仕事柄海外出張も多く、ゆえに多くの言語を操れるらしい。
突然の海外出張の知らせに僕は少なからず驚いたが、
どうやら母は知っていたらしい。
最近、親父とはほとんど顔を合わせてはいなかったが、
やはり会わないのと会えないのは違い、少し寂しいものがあるのだった。
その日、彼女にはもう申し訳なかったが、家族水入らずの夕食を楽しませてもらった。
久しぶりの家族三人での食事。久しぶりの親父との会話。
いい年して、とは思ったものの、やはり切なくなる僕だった。
彼女には後日、埋め合わせとして食事に連れて行くことになった。
(もちろん僕のおごりだ。)
血のつながった父親と。四六時中時間を共にしている彼女と。
家族というものについて、少し考えさせられた日だった。
20XX1/9 おごりとなるとなるべく安いところで・・・と算段を立てる僕。
次へ