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8話
ふと気づくとたまに彼女が見当たらないときがある。
まあ彼女がいつも僕の視界の中にいなくてはいけない理由もないが、
実は僕が気づかないうちに、意外と外出もしているようなのだ。
母の情報によれば、一日に一度は家の外に出ているようで、
何も持たずに家を出ては、何も持たずに帰ってくるらしい。
普段から何を考えているのか分からない彼女のことだ。
僕の知らない間に何をしているのかなんて、想像もつかない。
だから、今日は彼女を尾行してみることにした。
現在時刻は午後一時半。
昼食をとり終えて、一息ついた頃。
彼女は先日買ってあげたコートを着て家を出た。
見たところ、荷物らしい荷物は持っていなかったようだ。
少し間を置いて僕もこっそりとついていく。
彼女の足は迷うことなく道を選んでいく。
曲がり角一つ分ほどの適度な距離をとって、僕は彼女のあとをつけていく。
しばらくして何もない場所で突然彼女が足を止めた。
いや、何もないわけではなく、そこには空き地があった。
「こんにちは〜☆」
誰もいない空き地に向かって彼女は挨拶をする。
もちろん返事などない。
「こんにちは〜〜☆」
彼女はもう一度繰り返した。
すると、何処からか、一匹の猫が寄ってきた。
カラスのように黒い毛並みと、対象的に光り輝く金色の瞳とが印象的な猫だった。
首輪をしていないところから見ると、野良猫だろうか。
「こんにちは☆」
今度は確かに、彼女はこの猫に向かって話しかけた。
にゃ〜
言葉ではない返事が返ってくる。
「にゃ〜、にゃにゃにゃ〜、にゃ〜〜にゃ〜にゃ?」
にゃ〜〜
彼女は猫と会話しているようだった。
「にゃ〜にゃ〜にゃにゃにゃ、にゃ〜〜にゃ☆」
にゃ〜〜〜
英語すら分からない僕には、猫語の解読は不可能だった。
彼女はしばらく話したあと、コートのポケットに手を突っ込み、
小さな袋のようなものを取り出した。
それをあけて、中身を猫に見せびらかせながら飛ばしているようだ。
風に乗って僕の方にも飛んできた。
これは・・・、かつおぶし?
・・・・・・。
ああ、分かった。かつおぶしだ。
猫に、かつおぶしか。
そして多分これは風に乗せてばら撒いているのではなく、
風でばら撒かれてしまっているのだろう。
彼女らしいといえば彼女らしい。
結局、猫の口に入る前に全て風に流されてしまい、
最後までかつおぶしが猫の口に入ることはなかった。
少し涙目になった彼女と、そんな彼女に心打たれる僕だった。
その後も彼女は猫と話し、遊び、楽しんでいた。
日が暮れ始めたころ、彼女は猫に丁寧にお別れの挨拶をして、帰ってきた。
今日一日、彼女の観察をして、分かったことが一つ。
裏も表もなく、どこにいっても彼女は彼女だった、ということだ。
いつも見られない彼女の姿を見れて、今日は大いに満足だったが、
あのままでは猫が少しかわいそうなので、
夕食のテーブルで僕は少しだけアドバイスしておいてやった。
「あ〜、やっぱ魚の缶詰って美味いなぁ〜。猫が好きなのもうなづけるぜ〜。」
20XX/1/8 猫と少女。萌え。
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