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4話
時刻は夕方。
彼女は午前中から出かけているらしく、今日は一度も姿を見ていない。
今日は久々の休日だ。
久々に大画面でゲームができたこともあり、僕は少々ご満悦気味である。
というのも、今日は朝から彼女が外に出かけているようだからだ。
今朝起きて、まず僕は昨夜のあの言葉の真偽を確かめるため母と話した。
出会いがしらに「おはよう、おに〜ちゃん☆っ」とからかわれながら。
ところどころとぼけたりはするものの、大体はつかめた。
彼女は二日前、強烈な頭突きを僕の顎に喰らわせた直後、
すでに母と遭遇していたようだ。
どうりでそのあとの彼女の謝り方がいつになく落ち着いていたわけだ。
そのあとも僕の目を盗んで(というわけではなさそうだが)何度か母と会っているようだ。
そして昨日の買い物帰りにも少し母に相談したらしい。
いわく、「部屋が欲しい」と。
お前はウチの子か!と突っ込みたいところだがそれは置いておいて。
子が子なら母も母、蛙の子は蛙で、蛙の親も蛙らしい、
二つ返事でOKを出したようだ。
ちなみに母は詳しい事情は知らないようだ。
よくそれで見ず知らずの人間を泊めるものだ。
おかげで僕の秘密の居候同室同居生活という楽園-エデン-(←気に入った)が破壊されてしまった。
一番の敵は唯一の登場人物のヒロインではなく、モブキャラにすらならない自分の母親だったとは。
だがまぁ、母親が居候を断らなかったおかげでこの物語はもう少し続きそうなのである。
ひとまずほっとした。
そのあとも少し母と話した。
要点だけ話せば、今日は朝からおでかけらしい。
なぜか母はあの子に5000円のお小遣いを持たせたようだ。
「だってかわいそうでしょ?」と、流石にその言葉には開いた口が閉まらなかった。
彼女がいないなら、それはそれで都合がいい、と僕はリビングでゲームを始めた。
最近は彼女と一緒に部屋に籠りきりだったからな。
たまには大画面でストレス発散しないと。
一通り鬱憤を晴らし終わった僕はまた二階の自室に戻っていた。
気づけば夕方。丁度時計を見たときに彼女が帰ってきた。
「ただいまです☆」
すると、当たり前のように母は彼女を迎える。
「お帰りなさい。おに〜ちゃんは二階にいるわよ。」
「あ、はい☆」
階段を登る音がして、呼吸をおかずに彼女は僕の部屋のドアを開ける。
「ただいまです、おに〜ちゃんっ☆」
やたらご機嫌である。
「ノックぐらししろ、それと、おに〜ちゃんはやめろ!」
ちょっと不機嫌な僕である。
実際そんなに不機嫌なわけではないのだが、なんとなくご機嫌な彼女を見ると、不機嫌になりたくなるのだ。
別に変な意味は多分ない。ただ単に天邪鬼というか、ツンデレというか、そんな感じだ。
「おに〜ちゃんがダメならなんて呼べばいいですか?」
「そのぐらい自分で考えろ。」
相変わらず装う意味のない不機嫌を取り繕う。
じゃあ、考えておきますね。そういって彼女は、そこが帰る場所かのように当たり前に隣の部屋へ移動した。
本当に母親は見ず知らずの人間に娘の部屋を分け与えたようだった。
しばらくして、下の階から声がかかる。
「二人とも、ご飯よ〜」
二人とも、か。この得たいの知れない少女を、完全に母親は家族扱いをするんだな。
まぁかわいいから仕方ない。
程なくして食卓に向かう。
並ぶのはいつになく手の込んだ夕食。三人分。
親父はいつも朝早くに出て、夜遅く帰ってくる仕事人間なので大体夕食は親父抜きだ。
下手すると同じ屋根の下に暮らしながら一週間くらい会わないこともあったりする。
まあおかげで不自由ない生活が出来ているわけなのだが。
「それにしても豪華だな、今日は。」
問いかける僕に、
「家族が増えた記念日だしね、張り切っちゃった☆」
語尾に☆をつけるのはやめてほしい母である。
「早くしないと冷めちゃうから、ほら、食べなさい。」
確かにそうだ。むしろ早く食べたい。
「いただきま〜す」
「いっただきま〜す☆」
「いただきます。」
仲良く食べ始める僕達だった。
ふ〜、食べた食べた・・・。
なんで普通の食卓で、三人前で、あんな量を作るかな・・・。
もう腹が重くて歩くのもかったるい。
とりあえず食器を流しに持っていったあと、僕はリビングのソファーに腰をかける。
そういえば、一月に入ってからまだ全く新アニメをチェックしてないな、
明日にでもやるか。どうせアイツも母親の前なら出れるみたいだしな。
録画したテレビの一覧がNEWのマークのついたアニメに侵略されつつある。
食べ疲れた休憩にレコーダーを弄っていた僕のところに、
母親の食器洗いの手伝いを終えた彼女がやってくる。
例によって興味津々だ。
「これ、なんですか?」
きた、お決まりの台詞・・・。
「ん、ああ、」
僕はとりあえず録画一覧の中の下の方にあったお気に入りのアニメをつけてやる。
おぉ〜、わぁ〜、きゃ〜、とワンカットごとに騒ぐ彼女。
ここまで楽しんでくれるなら製作スタッフも本望だろうよ・・・。
結局一話丸々見てしまった。
そろそろ重かった腰も動くころだろう。
「おい、寝る準備するぞ。もうすぐ親父が帰ってくる。」
まだ彼女は親父には見つかっていない。母親もなんとか協力してくれるようなので、
あの頑固親父にはなるべく秘密で通したいものだ。
「あ、はい。じゃあお風呂、先にいいですか?」
金髪美少女の発する“お風呂”という言葉に敏感に反応しつつも、僕はさりげなく返す。
「おお、じゃあ僕は部屋にいるから上がったら呼んでくれ。」
短いやりとりのあと僕はまた部屋にもどる。
そうか、お風呂、か。
いや、なんでもない。
別に僕はロリコンじゃないから少女の裸なんか興味がない。
まぁ一緒に生活してたら偶然、もしかしたら、万が一見てしまうことになっても、
僕は多分、大方、おそらく、欲情なんかはしたりしないから大丈夫だ。
「お風呂上がりました〜☆」
突然の声にドキッとする。
いや、僕は別に変なことを考えていたわけではない。
早く風呂に入って寝るとしよう。
その日の風呂はいつになく気持ちよかった、気がした。
20XX年1/4 お風呂って気持ちいいよね、と誰にでもなく語りかけながら。
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