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3話



嫌われたじゃねーかっ!

嫌われちゃったじゃないかっ!!

どうしてくれるんだよ、僕のこれからの生活を!

とめどない怒りを、しかし、あまり突き詰めると最終的には

僕は僕に矛先を向けなくてはいけない気がするのであまり深く追求しないことにする。


今日の話をする前に、少し昨日のことを思い出してみようと思う。

あのとき、僕は顎に強烈な頭突きを喰らったようで。

意識が戻ったのは一時間後くらいだったか。

一時間気を失うって、相当だぞ、おい。大丈夫か?僕の顎・・・。

僕が起きたことに気づいた彼女は平謝りしてきた。意外と常識もある子だ。

それはそれで悪い気分ではないので許してやった。

(ここでそもそもの原因が僕にあるとか言及するのは無しだ。)

それから彼女とは、今後のこの物語の展開を大きく定める重要な話をした。

二の腕とほっぺた、どちらがやわらかいか、ではない。

主に彼女の今後の身の振り方についてだ。

とにかく行くあてはないらしい。

彼女に言わせると、両親は元の世界らしいし、当然家もない。

「なので、しばらく泊めてくださいっ☆」

アニメの一話の最終カットかのように、これがキメ顔と言わんばかりの笑顔で頼まれてしまった。

一方の僕はというと、あれこれ考えながら(変なことをではない)、

しかたなく、しかたなく、いたしかたなく、諦めたかのようにこう言った。

「じゃあ、当面は泊めてやる。ただ、いつまでもかは分からない。

 親にバレるわけにも行かないから、飯やなんかは自分で調達しろ。」

内心うはうはであるというのは表情には出ないように。

すると彼女は僕の暖かい言葉に感動するでもなく、こう返してきた。

「私、お金、ないです。」

今のご時勢に一文無しに家出する少女があろうか。さすがの僕も呆れてしまう。

余談だが、ここまでの食事は全て家に常備してあるカップ麺。

不健康とか言うな。僕はこれが好きなんだ。

「分かった。飯のことはあとで考えよう。しばらくは僕の秘蔵のカップ麺たちを分けてやる。

 その代わり、僕のことはこれからお兄ちゃん☆と呼べ。」

さりげなく弱みに付け込んで願望を付け加えておく僕に、

「わかりました、お兄ちゃん☆」

なんの抵抗もなく返事をする彼女。

実に感無量である。

いや、しかしこんな可愛い金髪美少女に、

「お兄ちゃん☆」と星までつけて呼ばせた人類が今までいただろうか、

否、いるわけがない。

僕はこの瞬間、人生の勝ち組になったと確信したんだった。


そんなこんなで彼女は我が家の、正確には僕の部屋の秘密の居候となった。

とりあえずこのマンガのような展開を逃さず手中に収めた僕には賛美の拍手が贈られるべきだ。

そもそも、あんなことをしておいてよくまぁ愛想を尽かされなかったもんだ。

おっと、あまりにも昨日の話が長くなってしまったな。

そろそろ時系列を今日に戻そう。

時間は昼過ぎ。二日前に降った雪も綺麗に融けた、絶好のお出かけ日和だった。

そういえば、かまくらを作れるほど積もらなかったななんてことを考えながら、

「よし、着替えろ。出かけるぞ。」

僕の小学校のころの宝物であるドラグーンを見つめ続けていて目を回している彼女に話しかける。

「どこにいくんですか?」

「買い物だよ、買い物。ここで暮らすとなったらいろいろと必要なものがあるだろ?」

実際は必要なものを買いに行くという目的もあったが、

彼女を外に出してあげたいという気持ちもあった。

実は出会ってから、彼女は一度も家の外に出ていない。

明らかに常識が欠如している彼女を大衆の前に連れ出すのはいかがなものかという僕の判断だ。

だがその辺は一昨日から二日間、それと今日の午前中もしっかりレクチャーしたから大丈夫だろう。

それに、流石に何日も籠りっぱなしではかわいそうだと思ったというのもある。

彼女は僕の心中を察してくれたのか、気持ちよく首を縦に振って、

「わかりました!お兄ちゃん☆」

と、耳に心地よい声で返事をする。

「分かったんなら早く着替えろ。とりあえず僕のジーンズとシャツにパーカー、着ていいから。

 それにコートでも羽織ればいいだろ?とりあえず目立つからその羽衣から着替えてくれ。」

「は〜いっ!おに〜ちゃんっ☆」

何度聞いてももう一度聞きたくなるようなかわいらしい声で彼女は答えた。

が、快い返事をした割に、彼女は僕の方を見たままじーっとしている。

お返しに僕も、艶かしくもあどけなさの残る彼女の肢体をじーっと舐める。ように見つめる。

「あの・・・」

「なんだ?」

「部屋から出て行ってもらえませんか?」

気づかれたっ!!

流石に異世界であっても同じような常識はあるようだな・・・。

仕方ない、この場は一旦引くか。あまりやりすぎると読者がいなくなるからな。


待つこと五分、彼女は僕の服に身を包んで部屋から出てきた。

いくら服が地味だろうと着ている人のかわいらしさまでは覆い隠せないらしい。

むしろ、少しだぼだぼな、僕が着ても格好悪いだけのパーカーは、

彼女が着ることによって萌え要素にまで昇華された。

「やばい、かわいい・・・」

「なにか言いましたか?」

手の甲が隠れて指先だけ見える絶妙な袖具合に思わず漏れた言葉も、

当人の耳には拾われなったようなのでひとまずよかった。

結局彼女は、外が晴れて暖かいということもあり、

コートは着ずにパーカーのまま出ることにしたそうだ。嬉しい限りである。

財布よし、携帯よし、準備は万端だな?

「よし、行くか。」


買い物の最中、だたでさえ金髪で目立つというのに、

彼女はあわただしくあちらこちらとまるで子供のように駆け回った。

彼女はどんなものにも興味を示し、まずは「コレなんですか?」から会話を始める。

その会話が終わる前には次のものに興味を示し、また「コレなんですか?」と。永遠にその繰り返しだった。

傍から見れば、確かにその様子は異世界人とまでは言えなくとも、異文化人ではあった。

彼女は目ぼしいものがあるとすぐにねだってきた。今日だけで何回「だーめっ!」と言ったことか。

とにかく、大変な買い物だった。まぁしかし、楽しい買い物だった。

友人知人に遭遇したらどうしようかと内心ヒヤヒヤしたが、

一日中出会うことはなく結局杞憂に終わった。


無事帰宅して、場面はまた僕の部屋。

いろいろと店を回ったので(服屋やディスカウントストアに始まり、100円ショップ、本屋、

CDレンタルショップにアニメショップ、果てはスポーツショップや工具屋まで回った。)、

帰ったときにはいい感じの時間になっていた。

もう疲れ果てて寝たいところだが、その前に買ってきたものを広げる。

なんでも欲しがる彼女を止めるのは至難の業だったが、とりあえず予定通りの買い物になったようだ。

中でも一番奮発したこの白いダッフルコートに注目していただきたい。

彼女は特に服にこだわりはないようだったので、これは僕が選んだ逸品。

金髪美少女に白いダッフルコート。

最高じゃんっ!!

いや、ほんと、

最高じゃんっ!!!

彼女も気に入ってくれたようで、さっそく着替えて(というよりは上から羽織って)見せてくれた。

私服の時、もとい、至福の時だった。

空から突然降ってきた女の子に、

キスして(起こすために仕方なくだが)、

居候にして(住むところがないというので仕方なくだが)、

ダッフルコート着せて(流石に羽衣着せたままじゃ外を歩けないので仕方なくだが)、

ああ、もう僕死んでもいいかも・・・。

そんなことを考えながら僕は寝る支度を始める。

さっきも言ったがもういい時間なのだ。

ちなみに今日の夕飯は出かけ先で僕のよく行く牛丼屋で食べた。

二人分払うとなると食事にも奮発はできないものなのだ。その辺は察してくれ。

僕としては安上がりで少し申し訳のない感じだったのだが、

彼女には牛丼屋すら新鮮だったようで、目を輝かせながら「つゆだくっ!」と頼んでいた。

さて、風呂にも入ったし、歯も磨いたし、そろそろ寝るか。

「お前、たまには床とベッド交代しね?」

さっき買ったネグリジェ(これも僕チョイスだ)を嬉しそうに着ているかわいらしい女の子に、

「床で寝ろ」と言うのは僕も心苦しいのだが、背に腹は代えられん。冬に床で寝るのは辛いんだ。

僕の容赦ない要求に対し、彼女は思わぬ言葉で返事をした。

それを聞いたときの僕の顔は、ノストラダムスの予言を待つ世紀末の民よりも絶望的な形相だっただろう。

彼女は、お母さんの許しが出たので、と付け加えながらこういったのだ。

「あ、わたし今日から隣の部屋で寝ます、おに〜ちゃん☆」





20XX/1/3 僕の楽園-エデン-が崩壊を始める音の中で。


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